焼肉のお話ではありません。
その自由度をコントロールするホルモンは、やはり「施肥」という行為によって制限されていきます。
そしてホルモンは土壌中の養分濃度によってその発現が左右されています。
塩類過剰で乱れるホルモン
後述する土壌中の「塩類過剰」は、オーキシンやサイトカイニンなどの植物ホルモンを複雑に変化させます。
- 土壌の養分濃度が根の伸長にとって最適な濃度よりも高すぎると、オーキシンによって側根の発生が抑制され、根の構造が単純化する傾向が見られます。
- 塩類ストレスがない状況では、サイトカイニンは成長を促進しますが、塩類ストレス下では、その濃度が減ることで、成長に使っていたエネルギーをストレス応答の遺伝子発現に回すことを可能にします。
- ABA(アブシジン酸) 濃度が増加し、サイトカイニン濃度が減少することで、植物はストレス応答を最大限に引き出し、成長を抑制してサバイバルを図ります
このホルモンの動態変化は、土壌にただ肥料を与えても、植物が成長モードに入りにくく、その養分を効率よく使えない、という実態を裏付けています。
お塩じゃないけど塩(えん)類
塩(えん)と聞くと、食塩(塩化ナトリウム)をイメージしますが、
農業における「塩」とは酸と塩基が反応してできる無機化合物の総称で、
水溶性のイオン性化合物のことを指します。
- 塩化ナトリウム NaCl(食卓塩): 塩酸(酸)と水酸化ナトリウム(塩基)からできる中性塩。
- 硫酸アンモニウム (NH₄)₂SO₄(硫安): 硫酸(酸)とアンモニア(塩基)からできる塩。これは肥料として使われます。
- 硝酸カリウム KNO₃⁻: 硝酸(酸)と水酸化カリウム(塩基)からできる塩。これも肥料として使われます。
農業分野で塩類集積の主要因となるのは、施肥由来の硝酸塩(硝酸態窒素)や硫酸塩、そしてカリウム塩、カルシウム塩などです。
化学肥料をはじめ、有機肥料であろうが、堆肥であろうが、
総合的に養分を多く持つものは、土壌中の塩類濃度を高めていきます。
特に精製度、発酵度が高いものほど無機成分が多く、水に溶ける無機塩(えん)類が多く濃縮していきます。
昨今の栽培を振り返ると、
堆肥中の養分は計算は無視!
硝酸塩・硫酸は速いから野菜向き!
pH調整に石灰(カルシウム)は必須!
という、土壌中の化学反応を意識せず、慣行的に行っていく栽培は悪循環の一途をたどります。
では塩類濃度を高めずに、植物ホルモンを最適化していく方法は?
次回、与える資材の養分濃度について。


