マグネシウムが欠乏するとチアミンが機能を果せなくなり、致命的な症状が現れることについてみてきました。
ここでマグネシウムを施用したいところですが、以前も書いたように、
単一要素の施用は他要素の欠乏を招く可能性があります。
もう一度ミネラルホイールに基づいて、マグネシウムの相乗・拮抗作用についてみていきます。
マグネシウムに拮抗するもの

マグネシウムに向かって「→」が出ている二つのミネラルがマグネシウム拮抗作用を持っています。
- カリウム(K)浸透圧の調整、気孔開閉、光合成産物の転流 過剰はCa・Mg欠乏を招く
- カルシウム(Ca)細胞壁の構成、根の成長促進 過剰はK・Mg欠乏を招く
ここで注目してほしいのは、マグネシウムからも「→」が出ているということです。
- 苦土(Mg)葉緑素の構成、光合成、酵素の活性化 過剰はK・Ca欠乏を招く
つまり、この三つの要素は膠着(こうちゃく)状態という絶妙なバランスの「三すくみ」の関係があるということです。
拮抗作用による「最小律」
「最小律」という言葉があります。
植物の成長は、必要なすべての養分のうち、最も不足しているもの(最小要素)によって制限されるという法則です。
厳密に成り立つわけではないですが、経験則としてよく知られています。
例えば、施肥過剰によって、苦土が過剰になると、絶妙なバランスを保っていたカリウムとカルシウムの吸収が阻害されます。
この結果、土壌中に十分なカリウム・カルシウムがあっても、植物の体内ではカリウム、カルシウムの利用効率が下がり、実質的にその二つがが「最も不足している養分(最小要素)」となってしまいます。
この人為的に作り出された最小要素(苦土)が、たとえ他のすべての養分が十分にあっても、作物の生育や収量を制限してしまうのです。
これはミネラルだけの話ではありません。
糖のエネルギー代謝が特定のビタミンによって制限されているように、どんなにたくさんビタミンを与えても、特定のビタミンが不足しているだけで、生理機能が活性せず、ビタミンの蓄積などを引き起こしてしまうのです。
ここまで話を進めてきましたが、施肥という行為がとても難しいことのように感じてきます。
土壌分析を全面にすることは不可能だし、施肥をした時点で、圃場全体で見ればバランスが取れていても、肥料が落ちたところは局所的に過剰施肥になってしまうのです。
施肥、難しすぎる!!
ということで、
施肥バランスを維持しながら植物を育てるにはどうしたらよいのか。
次回からじっくり考えていきたいと思います。


