肥料は大きく分けて「有機肥料」と「無機肥料」があります。
有機は英語にすると「Organic (オーガニック)」。
化学的意味合いとしては炭素を骨格とする化合物ということになります。
反対に無機は「Inorganic」。「in-(接頭辞)」は否定の意味を持ちます。
つまり二つの肥料の大きな違いは炭素骨格を持つかどうかと言えます。
背骨が炭素でできている。
まさか肥料に骨があるとは知りませんでしたが、
ここでいう骨格とは、化合物を構造式で表したときの、まさに背骨となる炭素でつながれた形状のことを言います。

この図でいう、六角形の枠組みの部分やジグザグの背骨部分が炭素でつながれているということです。
この構造式はカロテノイドの中で最も抗酸化力の強い「アスタキサンチン」という化合物で、紅鮭に含まれるのですが、その一重項酸素(活性酸素)消去能は…
ビタミンE (α-トコフェロール) の約 1,000倍
ビタミンC の約 6,000倍
コエンザイムQ10 (CoQ10) の約 1,000倍以上
β-カロテンの約 40倍
とかいうすごい抗酸化作用を持っています。
構造式からいろいろわかる!
紅鮭は遡上(そじょう)という過酷な長旅を行います。
この激しい運動により発生した大量の活性酸素からアスタキサンチンが身を守っていています。
実は上の構造式を見るだけでもその抗酸化作用の強さが分かったりします。
上の構造式には、共役二重結合(単結合と二重結合が交互に並んだ構造)が長く連なっています。
アスタキサンチンに飲み込まれた活性酸素は共役二重結合の雲の中でエネルギーを吸い取られます。
受け取ったエネルギーは、分子の長い共役二重結合全体に分散させ、安定した状態で熱として放出します。
エネルギーのなくなった活性酸素は安定した水や酸素に分解。
さらにすごいのは仕事を終えた後アスタキサンチンは再び安定して次なる活性酸素を消去できるということ。
また多くの抗酸化物質(ビタミンCは水溶性、ビタミンEは脂溶性)は、細胞膜の内側か外側のいずれかでしか作用できません。
しかし、アスタキサンチンは分子の両端にヒドロキシ基(水に馴染みやすい部分)を持ち、中央に長い脂溶性の鎖を持つため、細胞膜の二重層を貫通する形で存在します。
この特殊な配置により、アスタキサンチンは細胞膜の内側、外側、および脂質層の中心の全てにおいて活性酸素を捕らえて無害化することができ、細胞全体を効率的に酸化ストレスから守ります。
アスタキサンチンスゲー!
…というとんでもない話の脱線をしましたが、もしかしたら構造式から栽培のヒントが得られるかも…
そんな事も頭の片隅に置きながら閑話休題。
次回からあまり知られていない有機肥料・無機肥料のそれぞれのメリット・デメリットを考えていきます。

