「有機肥料は良いんだけど割高でねー。」
一袋の値段はあまり変わらなくても、成分の含有量が低いため成分量で均すとどうしても割高になってしまうのが、有機肥料のデメリットの一つです。
しかしこの試験結果を見ると、有機肥料の施用には成分量を超える、見落としてしまいがちな要素が隠されているような気がします。
有機肥料にあって、無機肥料にないもの。
第一に挙げられるのは幅広い微量要素の存在です。
無機肥料では、窒素・リン酸・カリ の他に、苦土(マグネシウム)、カルシウム、ホウ素、マンガンなど、総合的に微量要素が量的に高密度で入った肥料こそありますが、
種類の多さでいえば、天然由来の有機肥料には適いません。
例えば、
コバルト (Co):
- 窒素固定の必須要素:マメ科植物の根に共生する根粒菌の活動に不可欠であり、空気中の窒素を固定する能力を支える。非生物的ストレスにさらされた植物におけるコバルト取り込みの有益な側面 – ScienceDirect
セレン (Se):
- 酸化ストレスの軽減:抗酸化作用を通じて、紫外線や乾燥といったストレスによる植物のダメージを軽減し、生育を促す。植物に含まれるセレン:成長、抗酸化物質、植物ホルモンの結びつき – ScienceDirect
これらの成分がすべての有機肥料に含まれているとは言えませんが、家畜糞であれば、家畜飼料に添加されていたり、餌となる天然資材に微量ながら含まれていることが多いです。
相互・拮抗作用の重要性
そしていつか取り上げたミネラルホイールの考え方。

全てのミネラルは他のミネラルと相互・拮抗作用を及ぼしあっています。
拮抗作用があるということは、与えれば与えるほど他の要素の吸収が阻害され、
相互作用があるということは、与えれば与えるほど他の要素の貯蔵を使い果たします。
つまり単一の成分の過剰投与の行き着く先は他要素の欠乏です。
その過剰投与リスクを比較的軽減しやすいのが有機肥料ということになります。
それでも成分量や即効性を必要とする農業者都合の製造プロセスによって有機肥料でも偏ったミネラルバランスなのは否めません。
私たちが思っている以上に、肥料の施用を取り巻く化学は複雑で難しいものだと感じていただけたでしょうか。
次回は、ミネラルと対をなす重要な要素も考慮に入れて、複雑な世界をより複雑なものにしていきたいと思います。


