前回、といってもかなり前ですが、引き続き有機肥料と無機肥料の違いについて。
有機はマイルドに効き、無機は即効。
というイメージ。
今回は有機肥料の効きがマイルドな理由についてみてくいのですが、
それは肥料成分だけを見ていてもわからないかもしれません。
CN比の意味
今回登場するのが「CN比」という概念。
「Carbon(炭素)」に対する「Nitrogen(窒素)」の重量比のことを言います。
無機肥料はCがないのでCN比0なのに対し、
天然素材ベースで作られた有機肥料のほとんどはCN比5~30です。
つまり窒素の5~30倍、炭素があるということ。
一般に、この数字が大きければ大きいほど、分解に時間がかかり、肥効の発現が遅くなる。
といわれていますが、それは炭素の種類によるところが大きいです。
CN比が同じでもCの構成要素が、
セルロースやリグニンなどの難分解性炭素がメインなら分解は遅く、肥効の発現は遅い
でんぷんやブドウ糖などの易分解性炭素が多ければ分解は速く、肥効の発現は早い。
とはいったものの、CN比が高い資材ほどセルロースやリグニンが多く含まれ、低い資材ほどでんぷんや単糖で構成されている傾向にあります。
例外)糖蜜 CN比→無限
炭素+窒素が微生物の食事
微生物は炭素だけを食べて生きることはできません。
炭素を利用するためや、細胞を構成・増殖するために窒素分も必要とします。
つまりCN比が中~高な有機物を分解する際には、足りない窒素をどこからかとってくる必要があります。
それが施用した肥料だったり、土壌中の窒素だったりするわけです。
そうしていわゆる「窒素飢餓」という状態に陥る。
遠回りなプロセス
基本的に有機肥料は、材料を堆積させ、切り返し、混ぜ合わせる、のように発酵分解という過程を得ている場合が多いです。
その際、あまり硬くない炭素は分解して、易分解性炭素の割合が増えています。
そんな肥料を施用すればそこに含まれる炭素は微生物によってあっという間に分解されて、その際に窒素が一度に奪われてしまう。
有機肥料を撒いたあと、肥料表面に白い菌糸が広がる現象を見たことがある方も多いと思います。
まさに窒素を奪いつつ、易分解性炭素をエネルギーにしている状態。
これだとマイルドに効くというか、微生物が土壌窒素を一度奪って菌体化→無機化されてようやく取り戻すという感じ。
なかなか遠回りなプロセスを行っている気がする。
これだけでも有機肥料、無機肥料の使いどころが分かってきた気がするけどそれはまた次回。


