植物は動けないため、周囲の光・水・温度のわずかな変化を敏感に察知し、先回りして内部バランスを整えます。
植物にとって微少なストレスはシステムを破壊するものではなく、むしろ生育を最適化するための「入力データ」として機能します。
わずかな光の変化
光合成は植物にとってのエネルギーを獲得するための単なる「食事」ではありません。
自分というシステムのホメオスタシスを維持し、過酷な環境負荷を跳ね返し、さらに自分に都合の良い環境を作り出すための、唯一にして最大の資金源です。
なので雲が太陽を遮ったり、隣の植物の葉がわずかに重なったりすることで生じる光強度の変化ですら、貴重な資金源を逃すまいと、一滴たりとも無駄にしない仕組みが備わっています。
ステート遷移
光合成には2つのエンジン(系Iと系II)があり、これらが直列に動いています。
しかし当たる光の波長や強さによって、どちらか一方のエンジンばかりが過剰に回ってしまうことがあります。
片方のエンジンだけが過剰に動くと、電子の渋滞が起き、活性酸素が発生して細胞内のホメオスタシスが崩れます。
植物はこの「エネルギーの偏り」を微小な負荷として検知します。
ステート遷移とは、光を集めるアンテナをエンジン系Ⅰとエンジン系Ⅱの間で動かして両方のエンジンの回転数を一致させ、ホメオスタシスを維持させる機能です。
植物は数分という短時間でこの「アンテナの付け替え」を行います。
雲が太陽を隠したり、風で葉が揺れて光条件が変わるたびに、この微調整を繰り返しています
植物はこのステート遷移によって、エネルギーの過不足というストレスを「致命的な故障」に発展させず、常に最適なホメオスタシスの範囲内で光合成を完結させています。
しかし、環境によっては「電子の渋滞」がさらにひどくなり、アンテナの移動だけでは対処できなくなるときもあります。
植物にはその状態でもホメオスタシスを維持する、
さらなるシステム安定機構がもう一つ備わっています。


