苦い土と書いて

前回まで、細胞という工場内でのチアミンの役割についてみてきましたが、実際にはチアミン単体でこの仕事をすることはできません。

チアミンをはじめとするビタミンは様々なミネラルの力を借りて、ようやく力を発揮できるようになります、

マグネシウム(苦土)が最重要

チアミンはTPP(チアミンピロリン酸)という形になってはじめて働くことができます。

この変換の時、Mg²⁺(マグネシウムイオン)が重要な役割をはたします。

チアミンピロホスホキナーゼ(TPK)という酵素はMg²⁺という補因子がないと反応が行えません。

ここでMg不足になると、チアミンがTPPにならないため、チアミン欠乏症状が現れるようになります。

これは、同じ代謝をもつ、植物と人間で共通です。

チアミンが欠乏した植物は葉緑体の発達クロロフィル(葉緑素)の合成に必要な代謝プロセスが阻害され、目に見える症状として葉の黄化(クロロシス)が現れます。

“The relationship between thiamine and two symbioses: Root nodule symbiosis and arbuscular mycorrhiza”

チアミン・苦土欠乏は致命的

チアミン欠乏は代謝プロセスの阻害によってクロロシスを引き起こしますが、

葉緑素分子である苦土は、チアミンにかかわらずとも欠乏により直接的にクロロシスを引き起こします。

どちらも、植物にとって不可欠な光合成のプロセスを停止させるということです。

光合成は多くの植物にとって何よりも重要。

しかし、今すぐ苦土を施用!という焦りは禁物。

まず土壌中の苦土を使うには?

何が苦土の吸収を阻害している?

まずはそこにある苦土を使う方法を考えていきます。