全く新しい栄養価

廃菌床は、培地由来のカロリーと、菌糸由来のカロリーによってその栄養が構成されています。

菌糸は培地から栄養を吸収し、菌類独自の栄養素に変換・合成しています。

実はそれらの栄養素は将来の食糧問題解決策として、食用代替タンパク質源としての研究も進められているほど…

今回は土壌だけでなく、人に与える効果についても説明していきます。

1.タンパク質

菌類のタンパク質は、動物性タンパク質でも植物性タンパク質でもない、「菌体タンパク質」として独特な特徴を持っています。

  • アミノ酸組成:
    • 菌類は、米ぬかなどの培地から吸収した窒素源やアミノ酸を材料に、自らタンパク質を合成します。この合成されたタンパク質は、動物の成長に必要な必須アミノ酸(リジン、スレオニン、メチオニンなど)をバランス良く含んでいることが多いです。
    • 特に、多くの植物性タンパク質に不足しがちなリジンが比較的豊富に含まれている点が大きな特徴です。

2. キチン質

キチン質は、カニやエビの甲羅、昆虫の外骨格、そして菌類の細胞壁を構成する主要な成分です。

  • 成分:
    • ブドウ糖の一種であるN-アセチルグルコサミンが多数結合した、食物繊維の一種です。
  • 特徴:
    • 生理活性:
      • 免疫賦活作用: 腸管免疫を刺激し、免疫細胞を活性化させる働きがあるとされています。
      • 腸内環境改善: 難消化性のため、腸内の善玉菌の餌となり、腸内環境を整える効果が期待されます。
      • 吸着作用: 腸内の老廃物や有害物質を吸着して体外に排出する働きがあると言われています。
    • 土壌活性
      • 土壌微生物の活性化:キチン分解菌の増加により、微生物の多様化を促進します。
      • 病原菌の細胞壁を破壊:病原菌の細胞壁を破壊し、病原菌の増殖を抑制する効果が期待できます。
      • 作物の病害抵抗性の向上: 植物の免疫反応を活性化させ、病害に対する抵抗力を高める働きがあるという研究も進められています。

3. β-グルカン

β-グルカンは、キノコや酵母、大麦などに含まれる多糖類の一種で、その構造(結合の仕方)によって様々な種類があります。

  • 特徴:
    • 免疫賦活作用:
      • 菌類由来のβ-グルカンは、特に免疫細胞(マクロファージやNK細胞など)の表面にある特定の受容体と結合し、免疫系を活性化する作用が非常に強いことが知られています。この作用は、抗がん作用や感染症予防効果として研究されています。
    • 抗腫瘍作用:
      • シイタケに含まれるβ-グルカンの一種「レンチナン」は、がん治療薬として承認されています。これは、がん細胞を直接攻撃するのではなく、免疫システムを強化することで、がん細胞の増殖を抑制する作用によるものです。
    • 血糖値上昇抑制作用:
      • 食後血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。
    • コレステロール低下作用:
      • 腸内でコレステロールの吸収を抑制する効果が期待されます。

4. ビタミン

菌類は、培地から吸収した栄養素を使って、いくつかのビタミンを自ら合成する能力を持っています。

  • 主なビタミン:
    • ビタミンB群: 菌類は、ビタミンB1(チアミン)、B2(リボフラビン)、ナイアシン、葉酸などを合成します。これらのビタミンは、エネルギー代謝や神経機能の維持に不可欠です。
    • ビタミンD:
      • 多くのキノコは、紫外線に当たると細胞壁に含まれる前駆体からビタミンD2を合成します。これは、人間が日光を浴びてビタミンD3を合成するのと同じ仕組みです。廃菌床も日光に当てることで、ビタミンDを増やすことが可能です。ビタミンDは、骨の健康維持に重要です。

このように、菌類は単に培地の栄養をそのまま蓄積するだけでなく、より複雑で機能的な、独自の栄養素を作り出しています。

これが、廃菌床を単なる「有機物」ではなく、高い価値を持つ資源として見なす理由です。