菌根菌が植物に供給するのはミネラルだけではありません。
菌糸が作り出すネットワークは、植物の生命維持活動にとって重要な水分すらも供給します。
菌糸の直径は根毛の100分の1以下
菌糸は、植物の根から生えるさらに細かな根毛と比較しても、その細さが際立っています。
- 植物の根毛: 一般的に直径は約10~100マイクロメートル(μm)です。
- 菌糸: 直径はわずか1〜5マイクロメートルほど。特に細いものは1マイクロメートル以下になることもあります。
この直径の違いは、植物が単独で吸収できる水や養分の範囲を大きく広げる上で非常に重要です。
根毛は土壌中の比較的大きな隙間にしか入り込めませんが、菌糸はそれよりはるかに細かい隙間にも浸透できます。
細かさの物理
マトリックポテンシャルとは後述する水ポテンシャルの一つで土壌粒子に強く吸着される力や表面張力によって低下した水のエネルギーを表す指標です。
土壌が乾燥するほど、この吸着力は強くなり、マトリックポテンシャルの値はより低く(負の値が大きく)なります。これは、水が土壌粒子に「しがみついている」状態を意味し、植物がこの水を利用するにはより大きなエネルギーが必要です。
水は常に水ポテンシャルの高いところから低いところへ移動します。
菌糸は、植物の根よりも細かいのでさらに低い(より負の)水ポテンシャルを作り出すことよって、土壌が水を強く保持していても、菌糸は水を自分の内部に引き込むことができます。
ゲンキンな関係
土壌が湿っていて水が十分に利用できる場合、植物は根から直接水を容易に吸収できます。
この時、菌根菌に頼る必要がないため、菌への「報酬」である糖分の供給を減らします。これは、菌との共生にかかるエネルギーコストを節約し、そのエネルギーを葉や茎、果実などの成長に回すためです。
この糖分の供給調整は、植物と菌根菌の間でやり取りされる信号分子によって制御されていると考えられています。
植物は、水分ストレスの程度を感知し、その情報に基づいて、根から特定の信号分子を分泌したり、代謝経路を変化させたりすることで、菌根菌とのエネルギー交換を調節します。菌根菌もこの信号を受け取り、自身の活動レベルを調整します。
このように、植物と菌根菌は共生関係を最適化し、一定の水分吸収を維持することで急激な環境変化でも活動することができるのです。


