過酷な環境の記事の続き。
菌根菌が植物のストレスを軽減することについて触れてきました。
今回はそれぞれのストレスに対して、菌根菌がどの様なアプローチでストレスをケアしていくのか見ていきましょうあ。
物理的ストレスの緩和
土壌の硬さ、酸素不足、乾燥などの物理的ストレスを緩和する方法は、隙間さえあればの記事でも触れた菌根菌の微細な菌糸の働きです。
- 物理的絡みつき: 菌根菌は、非常に細くて強靭な菌糸を土中に広範囲に伸ばします。この菌糸が、粘土といった微細な粒子を物理的に絡め取り、結合させます。
- 接着剤の分泌: 菌根菌は、グロマリンという特殊な糖タンパク質を分泌します。このグロマリンは、土壌粒子同士を強力に接着させる「天然の接着剤」として機能します。グロマリンは水に溶けにくく、土壌粒子を強固に結びつけることで、団粒が雨などで崩れにくくなります。
- 有機物の分解・蓄積: 菌根菌は、土壌中の有機物(枯れた植物の根や葉など)を分解する過程で、団粒形成に必要な有機物や微生物の代謝産物を生み出します。
化学的ストレスの緩和
- 水分吸収の改善: 菌根菌の菌糸は、植物の根よりも広範囲かつ効率的に土壌中の水分を吸収します。高塩分濃度による浸透圧ストレスを軽減し、植物がより多くの水分を確保できるようになります。
- ナトリウムイオン(Na+)の吸収抑制: 菌根菌の中には、土壌中の過剰なNa+を菌糸内部に吸着・隔離し、植物の根へのNa+流入を抑制する働きを持つものがいます。これにより、植物体内のNa+濃度が危険なレベルに達するのを防ぎます。
- 植物の生理活性向上: 菌根菌は、植物の抗酸化酵素の活性を高めるなど、植物自身の生理的なストレス応答を強化することが知られています。これにより、塩ストレスによって発生する有害な活性酸素を消去し、細胞へのダメージを軽減します。
生物的ストレスの緩和
- 防御関連物質の生産促進: 菌根菌は、植物が病原菌に対抗するために必要な化学物質(フェノール化合物、フィトアレキシンなど)の生産を促します。これらの物質は、病原菌の増殖を抑制したり、病原菌から分泌される毒素を無毒化したりする働きがあります。
- 遺伝子の発現誘導: 菌根菌の共生は、病原菌の侵入を感知し、抵抗性を引き起こす遺伝子の発現を誘導します。
- 物理的バリア: 菌根菌の菌糸は根の表面や細胞内に広がり、病原菌が根の組織に侵入するのを物理的に妨げます。
- 競争による病原菌の抑制: 土壌中の菌根菌は、病原菌と同じ空間を巡って競争します。これにより、病原菌が利用できる資源が減少し、その増殖が抑制されます。
- 昆虫食害の抑制: 一部の研究では、菌根菌と共生している植物は、害虫の食害に対する抵抗性が高まることが示唆されています。これは、植物が菌根菌によって特定の忌避物質を生産するようになるためと考えられています。
以上のプロセスによって菌根菌は、植物がストレスなく健康に過ごせるような快適空間づくりを行っているのです。


