きのこにナイアシンが多いのは何で?

前回、きのこが培地の栄養を利用して新しい栄養素を作り、ビタミンもそのうちの一つであると書きました。

そして、多用している「食品成分データベース」。

このデータベースに基づくと、きのこに共通して「ナイアシン」が多く含まれているということが分かりました。

ナイアシンはビタミンB3とも呼ばれ、ナイアシンは「ニコチン酸」「ナイアシンアミド」という物質の総称です。

ナイアシン当量というのは、体内で利用できるナイアシンの総量で、必須アミノ酸のトリプトファンから合成することができ、食品中のナイアシン量(mg) + (トリプトファン量(mg) ÷ 60)で求められます。

ナイアシンアミドが栽培に良い影響を与えることはこれまで見てきたとおりですが、

「なぜきのこはナイアシンを蓄積するのか。」

その原理をひも解けば、土壌の世界の解像度がより鮮明になるはずです。

リグニンは固い!

リグニンは非常に頑丈で分解されにくい高分子化合物です。

これを分解できるのは、地球上でごく一部の微生物、特に白色腐朽菌(シイタケ、ナメコ、エノキタケなど)が中心です。

白色腐朽菌は、以下の酵素と過酸化水素を組み合わせてリグニンを分解します。

  1. リグニンペルオキシダーゼ(LiP)
  2. マンガンペルオキシダーゼ(MnP)

ちなみに「ペルオキシターゼ=peroxidase」の「per-」は「過酸化物」を意味し、「-oxidase」は「酸化酵素」を意味します。つまり、過酸化物を利用して他の物質を酸化させる酵素という意味です。

リグニン分解は重労働!

そんな硬いリグニンの分解は菌にとって大きなエネルギー消費を伴う「重労働」です。

分解の過程で、菌糸は大量の過酸化水素を生成します。これは、菌体にとって大きな酸化ストレスとなります。

この酸化ストレスから細胞を防御し、効率的な代謝を維持するために、菌はNAD/NADPなどの補酵素を大量に必要とします。

つまり、以下のような一連の流れによりナイアシンが蓄積されていくと考えます。

リグニン分解過酸化水素の生成酸化ストレスの増大細胞防御とエネルギー代謝の活性化補酵素NAD/NADPの需要増大ナイアシン合成の促進

このプロセスでナイアシンを多く蓄積するきのこ。

その菌糸が張り巡らされた廃菌床を利用することでナイアシンアミドを施用したときと同様の効果が得られるんじゃ?

次回、ついにフィールド試験へ。